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GBJ EYE -vol.2- Commercial & Industrial/太陽電池モジュール

レポート

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DATE
2016年10月07日

世界市場の動向
近年、地球温暖化ガス排出規制によって、電力需要の大きい中国や米国が排出量削減を目標に太陽光発電システムを積極的に導入している。矢野経済研究所によると、2014年の太陽電池モジュール世界市場規模(モジュール供給量ベース)は43GW(1,078億ドル)、2015年には55GW(1,199億ドル)に拡大するものと見られる。
中国や米国の他、東南アジアやインド、アフリカ、オセアニア等の地域においても太陽光発電システムの設置数が増加しており、2015年から2025年までの年平均成長率(CAGR)は10%以上で推移し、2025年の市場規模は148GWに拡大するものと見られる。
一方、太陽電池モジュールの供給価格は下落トレンドであり、2015年から2025年までのCAGRは▲4.2%、2025年の市場規模(金額ベース)は782億ドル(2014年の73%の水準)に留まると予想される。

 

日本市場の動向
太陽光発電協会(JPEA)によると、2016年第1四半期までの日本における太陽電池モジュール用途別年間出荷量は6,710MW(前年比▲25%)であり、住宅用が1,402MW(同▲26%)、発電事業用が3,343MW(同▲11%)、となる。
国内出荷に焦点をあてると、2012年7月には固定価格買取制度(FIT)が開始されたことで、発電所や産業・事業者向け出荷の著しい増加が見られたものの、その後の買取価格の引き下げ等により、2015年第1四半期以降は住宅用、産業用を中心に出荷量が大きく減少している。現在は業界的に“自家消費型”というスローガンに切り替えて需要の発掘を行うトレンドとなっている。
今後は、設備認定を受けたものの太陽光発電システムの価格下落に便乗して発電設備の設置を引き延ばす悪質な業者に対して、認定取消の措置が行われることになり、現在認定を受けた半分程度の業者が市場から消えることも囁かれ、市場の健全化が進むものと思われる。

担保価値としての太陽電池モジュール
太陽電池モジュール(未使用品)の担保価値は、①メーカーや販売店(卸売業者や施工業者)による製品・出力・システム保証等の有無、②既存案件に対する受注残高、③市場トレンドに合致した出力(W)及び価格帯の在庫、の3点に大きく影響される。
様々な環境下においても発電する必要がある太陽電池モジュールは、国産・海外産を問わず、メーカーや販売店による各種保証が担保価値を維持するための前提条件となる。モジュール導入業者が長期に渡って発電を行い、また、固定価格買取制度(FIT)により安定的にキャッシュフローを生み出すためには、製品が故障した際の保証が必要である。すなわち、製品保証の有無が在庫を既存販売先に対して換価可能となるかどうかを左右するものとなり、卸売業者や施工業者いずれの場合においても、これが担保価値を決定する大きな要因となる。
一方、既存案件に対する受注残高は既存販売先に対して納入予定である太陽電池モジュールの物量を表し、①の前提が満たされて初めて意味を持つことになる。現行の制度では、発電業者は設備認定の申請及び認可を受けた際に申請したブランド/メーカーのモジュールを変更するケースは殆ど起こり得なかった。これは変更認可が降りた時点で売電単価も変更され、実質単価が下がってしまう為である。しかし2017年4月に改定となる制度に先立って、2016年8月よりモジュールを変更しても売電単価は変わらないとするルール変更が行われた。これにより発電業者は申請時より変換効率が良く、コストを抑えられるモジュールに変更することが可能となった。
最後に担保対象となるモジュールは市場トレンドに見合った在庫構成となっていることが重要である。滞留在庫が全体に占める割合に加え、変換効率は高くとも販売価格が販売先の要求する水準に満たない在庫構成は、対象資産の担保価値を大きく押し下げる要因となり得る。
なお、日本において既存販売先に売却することが困難な在庫に関しては、保証を必要としない海外へ販売を行う買取業者に対して換価が可能である。これらの業者は未使用商品のモジュールであれば、製造国やブランド等によってモジュールの仕入簿価の数%から購入してくれることが判っており、既存販売先に対する換価よりも大幅に(担保価値は)下落するものの、在庫処分の受け皿の役割を果たす買い手となる。

 

太陽電池のセカンダリー・マーケット
稼働後数年を経過した太陽光発電所自体が取引されるセカンダリー・マーケットは既に立ち上がっており、売買を斡旋する仲介業者や発電所のデューディリジェンスを行う支援業者などが出現している。また、歴史的な低金利を背景にファンドが組成されるなど、今後セカンダリーマーケットが活発化していくことが予想される。