MENU

GBJ EYE -vol.3- Eコマース市場/アマゾンの拡大戦略

レポート

トップページナレッジGBJ EYE -vol.3- Eコマース市場/アマゾンの拡大戦略

DATE
2017年10月16日

米国での動向
米国の小売市場全体において、2016年のEコマース(EC)のシェア8%(1)~11%(2)であり、成長を続けている。ウォルマートや他上位20社では、ECの売上高比率は16%となっている。アマゾンは、全米7位の小売企業となっており、ECでダントツ1位のシェアと成長率を誇る。従来型企業が相次ぎEC専業の企業を買収している中、アマゾンは17年6月に、提携先を探していた食品小売り大手のホールフーズ・マーケットを137億ドル(1.5兆円)で買収すると発表した。
アマゾンの戦略は、取り扱い商材に生鮮品を含む食品を充実させ、顧客の囲い込みを強化することにより、購入頻度と金額の増加を狙うことと思われる。そのためには、ホールフーズが運営する464店舗と約50ヶ所の冷蔵・冷凍対応の物流網の取得が、アマゾンにとって重要である。購入額と頻度が非常に高いPrime(有料会員)への生鮮食品販売の拡大及び、実店舗を通じたラストワンマイル配送の強化が、小売市場シェアの更なる拡大の鍵になると考えられる。また、アマゾンによる、実店舗の「省力化」・「自動化」に向けて先端的なイノベーションも今後期待される。
*データ出所: (1)US Census Bureau, (2)Euromonitor

 

日本におけるEC市場の動向
2016年の日本のBtoC-EC市場が15.1兆円(3)まで拡大しており、全体の小売市場の5.4%(4)~7.0%(5) となっている。一方、Euromonitorの調査によると、海外各国のEC化率は、韓国が約18%と首位にたち、中国が急成長し、イギリスと同水準の15%となっている。日本のBtoC-EC市場はまだ飽和しておらず、伸び代を残しているものと推測される。直近の成長率が続けば、ニッセイ基礎研究所の予測では、EC化率は2025年9.2%、2035年に13.4%となる。商材別でみると、日本でEC化が進んでいる品目(6)は事務用品・文房具(EC化率33.6%)、生活家電・AV機器・PC・周辺機器等(同29.9%)が高い。食品・飲料・酒類は同2.3%とEC化が遅れているが、市場規模が大きい。食品通販業界は現在、生協グループが約4割のシェアを持っているが、配達の頻度は週1回のみと決まっている。食品は、購買頻度が高いという特徴があるため、即日・同日配達の需要を満たすことができれば、消費者とECの接点を増やし、EC市場のさらなる拡大に寄与する可能性が高い。
*データ出所: (3)(4)経済産業省, (5)Euromonitor, (6)経済産業省

 

アマゾンジャパンの戦略
日本経済新聞社によると、国内の小売市場が2年連続で縮小するなか、アマゾンジャパンは2016年に売上高は1兆円を突破し、成長率も前年比17.5%と非常に高い。全国の小売企業ランキングで、6位となった。アマゾンが日本でもPrimeを展開し、会員数が800万人と推定されている。2015年からPrime Now(即時配達)サービスを展開している。また、米国と同様に、2017年4月から生鮮食品の配達「Amazon Fresh」も一部エリアで開始するなど、品揃えを拡充させている。
アマゾンは全国8都道府県18カ所の物流センターを稼働しているが、顧客へ最終配達(ラストワンマイル)する自社の能力が弱い。ヤマト運輸は2017年9月にアマゾン向けの運賃を4割超値上げした。アマゾンは、中小の配送業者「デリバリープロバイダ」の活用を増やしたが、対応しきれず、一部の配達に遅れが生じた。アマゾンにとっては、日本で独自の配達網を確立させ、ラストワンマイル配達を強化することが急務となっている。

 

セブン&アイ・ホールディングスとアスクルの提携
一方、セブン&アイ・ホールディングスとアスクルは2017年7月、ネット通販事業で提携すると発表し、共同で生鮮食品の宅配事業に取り組む。アスクルの「ロハコ」は独自のシステムとPBの販売で女性に支持されている。食材の宅配事業は2017年にまず東京都一部地域でスタートし、2020年までに首都圏全域に広げる予定である。ロハコでの物流網は、B2Bが主体のアスクルのものを利用し、自社配送比率が60%以上と高い。アマゾンに比べ、独自の配達網を持つことで優位に立っているといえる。