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データ・アナリティクスにおけるBIの活用

コラム

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DATE
2021年04月21日

ゴードン・ブラザーズ・ジャパン バリュエーション部 マネージングディレクター 帥 暎琦 

 

■ ITとBI

新型コロナが社会や経済に大きな影響を与えている中、外出自粛やロックダウン等により、人々はこれまでに経験したことがないほど、日常生活や行動が制約されています。そうした中、ITを駆使したリモートワークや教育実習等、このような状況下での経済活動の大部分がITによって成り立っているといえます。

今までITをフル活用してこなかった企業も、MicrosoftのSkypeやTeams、Zoom等のツールを使って会議・面談等を行うようになったことは、企業の働き方に対する考え方を改める機会を与えただけでなく、ITを駆使できない企業は今後、取り残されてしまう可能性があることを示唆するものとなっています。

そうした中、”ITの体現者”とも言われるBI*は、データの可視化・分析・予測等の役割を担うことから、今後殆どの企業にとって必要不可欠な存在となってきます。迅速かつ質の高い経営判断を下すのに必要なことは「経験則」が重要であることはもちろん、ビジネス環境が目まぐるしく複雑化していく時代において、「データ活用」が最重要であることは言うまでもありません。

*Business Intelligence: BIツールを用いて、大量データの分析やその結果を可視化することで経営上の意思決定を迅速にサポートする手法

 

■ データ・アナリティクスとしてのBI

ゴードン・ブラザーズ・ジャパン(以下「GBJ」)は2019年6月より、BI powered by GBというBI導入支援サービスを開始しました。このサービスは通常のシステム企業が提供するBI支援サービスとは異なり、GBJのグローバルネットワークを活かした有形資産に対する知見、評価及び換価経験に基づくBIシステムの導入を可能にするものとなります。ここで重要なことは、弊社の提供するBI構築サービスは企業自身が直面している課題・ニーズのみならず、GBJが持っているアセット(有形資産)に対する知見及びそれに基づく最適なKPIの算出を多くの企業に付加価値として提供できることにあります。

例えば、滞留在庫が多いと悩む企業であれば、GBJは当該企業が持つデータを最適な手法で可視化を行い、様々な切り口から滞留在庫の特定を行うだけではなく、単品に紐づく売上から在庫回転期間を算出し、企業が独自に滞留区分として設定しているルールと組み合わせ、本当の意味での過剰在庫として算出することができるようになります。通常のExcelでは対応できない作業をBIダッシュボードにてスピーディに可視化させることで、担当者が原因を容易に特定することを可能にするわけです。

一方で、企業が今まで認識していた滞留在庫を、在庫回転期間でシミュレーションをすることで滞留在庫の定義に対する投げかけもできるようになります。

例えば、
「分類Xの在庫回期間の平均値が20週であった場合、長期在庫の定義は何週になるのか?」
という問いに対して、何と答えるでしょうか?

20週以上が滞留在庫、という意見もあれば、20週はあくまで平均値のため、品目別のバラつきを見て決める必要がある、という意見もあります。更に、a) 平均値は20週であるが、この平均値は全ての対象在庫に紐づく売上から算出されたものなのか、あるいは、b) 在庫残高がゼロの品目の売上も加味された状態で算出されたものか、ニュアンスは微妙ですが、結果は大きく異なるわけです。

すなわち、前者(a)は保守的に見ており、売上を生み出さない滞留在庫が多くあった場合、平均値が20週ではなく、30週となる可能性がある一方、後者(b)は例えば在庫残高のうち20%が売れ筋商品、これらの売上全体に占める売上構成が60%超であった場合、滞留在庫の残高に対しても売れ筋商品による売上が計算に適用され、結果として全体平均の回転期間は良く見えて算出されてしまうわけです。このような場合において、対象在庫に紐づく売上で算出された回転期間とそうでない場合の回転期間の2つを見ることで長期在庫の定義を行うことができる、というわけです。下図はこれを端的に解説したもので、①は在庫高が売上原価(77,018)をベースとした場合、20週で在庫が1回転する計算であるはずが、分類Xの商品別在庫に紐付く売上原価を見ると、実は2,307(②)しかなく、実際には654週という超長期在庫であったことが分かります。

 

データ量が多い場合やこの計算をExcelでやろうとすると観測点別に数値を算出するのが非常に難しく、今週と先週、今月と先月、今年と前年という切り口で、かつ事業部門別・店舗別・ブランド別にダイナミックに品目を特定したい、といったニーズがある場合、殆どの企業で担当者は「現実的ではない」と嘆くはずです。それもそのはず、Excelはこのようなことを行うのに適したビジネスアプリケーションではなく、従来のやり方で期待することを実現することが非常に困難であるからです。数年前までなら、GBJでもこのような回答でしたが、現在はITの進歩やGBJが持つBI構築のノウハウを持ってすれば、このようなことを実現することができるだけでなく、更に長期在庫の定義に関するシミュレーションやKPIの設定等を行うことも可能になります(下図)。

【在庫流動数の概念】

 

■ GBJによるBI導入支援の背景

最後にGBJがBI導入支援サービスを決断した背景について少し話をします。BI導入支援サービスを始めた背景には、在庫評価を行う実務担当者が顧客から受領する大量のデータ処理に日常的に悩まされていたことに起因します。企業規模が大きい企業であれば、データ量が数十万、数百万レコード(行)という単位になるため、時系列ベースで見た場合、数億行というデータ処理を行うことも珍しくない。一方で、データ分析ツールとして最も有名なExcelは処理能力に限界があり、1シート当たり100万行という制限に加え、データ量が増えた場合の処理に多大な時間が要してしまいます。その結果、データ処理だけで殆どの業務時間を費やしてしまうこととなり、データ分析を行う時間もまともに確保できないまま、ただひたすらルーチンワークと向かい合う日々が続いていました。複数の案件を同時に処理するためには最新のテクノロジーを活用するほか道は残されていなかったのです。

そこで、試行錯誤の末、Excelと最も親和性の高いMicrosoft社のテクノロジーを活用して業務効率化に成功し、結果的は以下の通り、実質的に作業時間を90%以上も削減できるようになりました。この成功事例を基に、分析ツールとしてMicrosoft社のPower BIを活用した在庫評価が始まり、今までデータ処理に使っていた時間をデータ分析に費やすことができるようになりました。

 

本事例は弊社におけるBIツール活用の成功事例ですが、BIテクノロジーを導入すれば、全ての企業で付加価値の高い業務により多くの時間を費やすことができるようになるわけです。ポイントは、事業部単位、あるいは個人レベルで課題を認識すること、その課題が“喫緊のニーズ”であるかどうかをしっかり把握し、会社が中長期的に成長できるよう、将来に向けて投資を行うことです。

このような経験を基に、GBJでは在庫・売上等の分析プラットフォームの構築に対するノウハウが溜まり、GBJの専門領域である棚卸資産に対する分析手法を付け加えたものを、外部支援サービスとして展開できるようになりました。コロナ禍により、IT化の波が止まらない中、企業は既存のビジネスモデルを転換せざるを得ない状況に追い込まれています。データが日々蓄積されていく中、“データを価値のある情報に変換”し、ビジネスの成長に繋げていくことは最重要課題であり、これを実現していくためのBI活用が益々期待されるでしょう。