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消費者行動のシフトとショッピングモールの進化

コラム

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DATE
2021年04月21日

Gordon Brothers, Managing Director, Retail Tim Shilling

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Summary

  • ショッピングモールは、消費者行動の変化に合わせて進化してきたが、その進化にも新たなステージが到来している。
  • 小売業者は、ECの繁栄や消費需要の変化に対応するため、デジタル化の戦略を加速させている。
  • 新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で加速されたいくつかの変化は今後残っていくだろう、という業界の意見にGordon Brothersも同意する。
  • 新型コロナウイルスの影響で百貨店業界の苦境は加速した一方で、かつてはAクラスに分類されるモールやショッピングセンターに出店できなかった小売業者が、今ではデベロッパーに歓迎されている。
  • コロナ禍で数百万人もの消費者が好んで買い物をするようになった従来のECと共に、オンラインで購入し店舗で受取るカーブサイド・ピックアップも今後引き続き注目される。
  • さらに、オンライン注文の出荷業務は店舗レベルで実施することが多くなり、ECの加速的な変化に対応するため、実店舗をミニ物流センターへと変えていくことになるだろう。
  • “唯一の不変は変化である”、ショッピングモールの未来を形成する上で重要な5つの分野を解説する。

 

 

これまでショッピングモールがアメリカ国民の生活の中心であり、ネオンが輝く「街の広場」にティーンエイジャーが集まり、たくさんの買い物客が店舗で服や化粧品、音楽、電化製品、ギフトなどを購入していたがその時代は終わった。

1980~1990年代に全盛期を迎えたショッピングモールは、今や昔懐かしく思える。今日のショッピングモールは大衆文化の頂点から転落し、過去20年間で実店舗数は減少したが、消費者の行動変化に合わせ進化し続けている。ショッピングモールは、消費者の買物をより充実させるためのアメニティ、体験、エンターテイメント等を提供し、今でも重要な‟目的地“となっている。ほとんどのショッピングモールは、百貨店を中心に、レストラン、バー、映画館、フィットネスセンターなどを備えている。

そして今、ショッピングモールの進化に新たな局面が訪れている。現在も続く新型コロナウイルスに起因する休業、入店制限、ソーシャルディスタンス、サプライチェーンの問題、出荷の遅延は、多くの業界においてすでに進行中であった変化を加速させた。救済活動が活発化するにつれ、空き店舗は国が運営する臨時の予防接種会場としても再利用されている。

ショッピングモールのオーナーの多くは、「ニュー・ノーマル」の中で存在意義をどのように維持するか、方法を模索している。また小売業者は、ECの急拡大や消費需要の変化に対応するためにデジタル戦略を加速させている。

業界全体として、コロナ禍をきっかけに加速した変化が今後も続くという見方が広がり、Gordon Brothersも同じ見解である。デパート、レストラン、劇場、ジム、学校用品の買物などへは需要が回帰すると予測する。また、昨年打撃を受けた結婚式や祝賀会、卒業式などは再開される見込みで、フォーマルウェアの需要も高まる可能性はある。

小売業、金融機関、企業再生などの業界関係者は、消費者動向の変化、店舗の閉鎖、商業不動産の傾向に最もさらされている小売業者を理解することで、市場におけるリスクと機会を見極めることができる。

 

パンデミックで加速するシフト①:デパートの苦戦

現在進行中のパンデミックは、実店舗を取り巻く環境に変化をもたらし、2020年小売業は休業や消費者の減少に悩まされた。すでに売上が減少していたにもかかわらず、パンデミックは米国の百貨店業界の苦境を加速させ、年間売上は前年比14.4%減となった。[1]

パンデミック以前は、一部の高級ショッピングモール、つまりAランクと呼ばれるモールの業績は好調だった。しかし、百貨店はパンデミックの間、不要不急の事業に分類され、臨時休業を余儀なくされ、経営者は注文の遅延やキャンセル、従業員の解雇に悩まされた。その結果、ショッピングモールの空室率は過去20年間で最高となり、2020年第3四半期には0.3%増の10.1%となった。[2]

米国では2020年に11,000店舗以上が閉鎖され、この記録は2021年に再び更新される可能性がある[3]。 景気回復には数年かかると予想されるが、商業用不動産も長期リースのため進化には時間がかかる。一般的な小売店の契約期間は約6年、オフィスは10年近くになる。

しかし、Gordon BrothersのTom Pedulla不動産部門代表は、明るい兆しを見出している。店舗の閉鎖が急増しているため、かつてはAクラスのショッピングモールやショッピングセンターに参入できなかった小売業者が、今ではデベロッパーに歓迎されている。さらに、デベロッパーはこれらの小売業者と協力して店舗を拡大することを望んでおり、パンデミック以前には存在しなかったような機会が生まれている。

 

パンデミックで加速したシフト②:ECの繁栄

ウイルスの蔓延により小売業界は混乱し、店舗の閉鎖やECへの移行を余儀なくされたが、ECは瞬く間に何百万人もの消費者に好まれるショッピングチャネルとなった。米国におけるECの売上は急上昇し、2020年の第2四半期、第3四半期、第4四半期には、それぞれ2019年比で44.5%、36.6%、32.1%の成長を記録した[4]

ECの売上は、実店舗の売上が遅れている中で、ホリデーシーズン(クリスマス・年末)の予想さえも上回った。Adobe Analyticsによると、2020年のホリデーシーズンのECは、2019年に比べて32.2%増加した[5]。 ホリデーシーズンの早期開始は、空前の成長を遂げた1年後にさらなる追い風となったが、より長期的な変化を表している可能性もある。

従来のECに加えて、オンラインで購入して店舗で受け取る、「カーブサイド・ピックアップ」などの新しい配送方法も定着しつつある。業界各社はバーチャルショッピングのようなテクノロジーを駆使したトレンドにも積極的にも挑戦しているとみられる。例えば、Gordon Brothersの高級宝飾品業のクライアントの中には、ビデオカメラシステムや照明に投資し、顧客にバーチャルでジュエリーを見せることができるようになった会社もある。多くの場合、これらの施策によって収益を維持するができた。

パンデミック後の世界では、低価格・高付加価値の小売店に加え、ECが引き続き成長していくとみられる。小売企業は、前例のないサプライチェーンの混雑に対処するために、ホリデーシーズンを早めに迎え、オンラインでプロモーションを行うことで、継続的な配送や在庫の変動を緩和することが今後も継続されるであろう。

さらに、これらの小売業者を再評価する際には、ECチャネルがこれまで以上に重要になる。一部の地域で起きているように、より多くの人がワクチンを接種し、集団免疫力が高まっているため、店舗が完全に再開された直後に、資産ベースの貸し手は再評価を行う必要があるかもしれない。

 

経営難に陥った実店舗の再利用

ECへの移行が加速する中、オンライン注文の処理を店舗で行うケースが増えてきている。顧客のニーズに適切に応えるために、小売業者は実店舗をミニ物流センターに変えていくであろう。苦境に立たされたショッピングモールや空いている主要テナントスペースには、アマゾンやフェデックスなどの企業が集まり、マイクロ・フルフィルメントのために再利用する可能性がある。

しかし、商業施設から工業施設へとコンバージョンするには、物件の改築が必要となり、住民からの抵抗を受ける可能性がある。さらに、ショッピングモールの2つ以上の主要テナントが空くと、契約の「キックアウト条項」が発動する可能性があり、フルフィルメントセンターはこの空室を解決する資格がないかもしれない。

契約の「キックアウト条項」は、ショッピングモールのオーナーに壊滅的な打撃を与える可能性がある。主要テナントが閉店したり、全体の稼働率が一定の閾値を下回ったりすることで、ドミノ効果が発生し、系列の小売業者が賃料の譲歩を求めたり、完全に契約を破棄したりすることになる。ショッピングモールの家主が小売店に投資する理由の一つは、このような条項にあるのかもしれない。

ショッピングモールのスペースを再利用するアイデアとしては、オフィス、住宅、医療施設、コミュニティカレッジなどがある。一般小売業やアパレルのテナントが苦戦している一方で、食料品店のような必需品を扱う小売業や、レストランやフィットネスセンターのような体験型の小売業は、はるかに好調に推移している。苦戦している小売スペースをオフィスや学校、フィットネス、医療センターに変えることで、魅力的な体験を提供し、実店舗の繁栄に必要な人通りを集めることができる。

 

ショッピングモールの未来はどうなるのか

より多くの人がCOVID-19ワクチンを受けるようになると、一流のショッピングセンターは立ち直ることができる。しかし、パンデミック前でも営業継続に苦労したようなショッピングモールは、買い物客がより高級感のある場所に移動したり、単にオンラインでの買い物を選択したりするため、閉鎖が加速される可能性がある。

ショッピングモールは、20世紀後半に米国の郊外に移住した人々が、買い物や社会的な交流のために集まってくる目的地のコミュニティセンターとして機能した。

 

Gordon Brothersは、ショッピングモールの未来を形作るために、以下の条件が重要であると考えている。

1.全性と利便性:
パンデミックにより、健康と安全への懸念が生まれ、実店舗から客足を奪っている。消費者は、密閉空間となるショッピングモールを訪れることに不安を抱いていた。しかし、最近手がけたショッピングモール内の店舗では、この傾向が薄まってきた。これは、需要の回復や「コロナ疲れ」の結果と考えられる。

2.用途の再考:
大規模店舗は、時代に合った店舗に生まれ変わる必要がある。低業績の小売企業は、実店舗とECチャネルの両方でブランドを強化できる、より収益性の高い場所や旗艦店に資本を集中させるべきである。

3.飲食店:
消費者が環境への影響を意識するようになったことで、注目の焦点はファストファッションから食品へと移った。飲食店の選択肢があれば、需要が促進され、お客様がショッピングモールを訪れる新たな理由が生み出される可能性がある。強力な飲食店は、消費者のショッピングモールでの滞在時間を増加させ、他のテナントの価値を高める。

4.テクノロジー:
デジタルツールを利用して顧客との関わりを持たない小売業者は、おそらく生き残れないであろう。苦戦している小売業者にとって、実店舗が閉店した後でも、最近ではECへの移行とブランドの再活性化が有効な選択肢となっている。

5.立地:
食料品や薬などの生活必需品について、消費者はワンストップで購入できる場所を好むようになっている。日常の機能的なニーズを満たすには、地元の近隣センターやストリップショッピングモールが最も便利である。

 

唯一の不変は変化である

パンデミックをきっかけに、ショッピングモールや小売業者の運営に光が当てられ、弱点を明らかにされることで、小売業の現状を変え、業界のトレンドを世界的に加速させている。

昨年は小売業界にかつてないほどの不確実性、複雑さ、変化をもたらしたが、パンデミックはこれからの1年に影響し続けるであろう。小売業者や小売業界の関係者は、ビジネスモデルを再評価し、今後もビジネスを進化させ、コストを削減し、消費者の力の増大に対応しなければならないであろう。

未来を予測することは誰にもできないが、COVID-19後の世界における小売業の未来については、重要な課題が残っている。ショッピングモールがすぐに完全に消滅することは考えられないが、オーナーと入居者の両方にとって、その形は違ったものになるかもしれない。

 

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脚注

[1] U.S. Census Bureau Retail Sales https://www.census.gov/retail/marts/www/marts_current.pdf 

[2] Moody’s Analytics REIS and_the_Retail_Debacle_2020-04-03.pdf”>https://www.moodysanalytics.com/-/media/whitepaper/2020/MA-REIS_COVID-19_Pandemic_and_the_Retail_Debacle_2020-04-03.pdf

[3] Loss Prevention Media -December 11, 2020 https://losspreventionmedia.com/it-may-be-a-record-but-its-not-a-surprise-1157-stores-closed/

[4] U.S. Department of Commerce, Latest Quarterly E-Commerce Report https://www.census.gov/retail/index.html#ecommerce

[5] Adobe Digital Insights, Reviewing 2020’s Holiday Shopping Season,