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データ・ドリブン社会におけるBIの活用

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DATE
2019年07月16日

ゴードン・ブラザーズ・ジャパン バリュエーション
マネージングディレクター  帥 暎琦

データの重要性

ビジネスの根幹がIT技術の進歩よって変わろうとしている。とりわけデータは重要な資産であり、あらゆる産業において中心的な役割を担っている。

“Driven by data, powered by intelligence”

IT企業大手MicrosoftのCorporate Vice PresidentであるJames Phillips氏が2019年6月に開催されたMBAS(Microsoft Business Applications Summit)で語った言葉である。

“データ・ドリブン”、すなわち、データを上手く活用することが顧客とのリレーション(カスタマーエンゲージメント)を強固にし、企業はデータを基に製品やサービスの変革を実現していく。また、データを活用することは業務の効率化、さらにそれを実行する社員力の向上に繋がり、データが新しいデータを生み出す“サイクル”が出来上がる。これはデジタル・フィードバック・ループと言われる概念であり、ITによってあらゆるものが繋がっている現代ビジネスにおいて極めて重要な考え方である(下図) 。

 

■ BIとは

このような時代において、企業の競争力は保有するデータをいかに有効活用し、より迅速かつ正確な意思決定に結びつけられるかに左右されており、そこで登場するのがBIである。

BI(ビジネス・インテリジェンス)は1958年、当時のIBM研究所に所属していたエンジニアであるハンズ・ピーター・ルーン氏が提唱した概念であり、「希望する目的のための行動をガイドできるよう、既に存在する事実の相互関連性を把握する能力」として定義され、目的を達成するために日々蓄積されていくデータ群から関連性を見つけ出し、有用な情報へと変換していく力と解釈される。その後、1989年に後のガートナーグループのアナリストとなるハワード・ドレスナー氏が新たなBIを提唱し、「事実をベースとした支援システムを使用した、ビジネス上の意思決定を進化させるための概念と手法」と、現在のBIのコンセプトのベースとなった。

ここで重要なことは、ハワード氏が提唱するBIはデータベースシステムやその他のツールを活用し、ビジネスにおける経営戦略や意思決定の正確性と迅速性を向上させるための概念及び手法であり、システムやツールの活用を視野に入れていることである。また、経営者や事業部長、あるいは一般社員などが蓄積されたデータを必要に応じて自ら集計・加工・分析・レポートアウトすることにより、経営上の意思決定を最大限に迅速化させることに焦点を置いている。

BI及びBIツール

BIと混同しがちな用語の1つに、BIツールというものがある。BIの概念は前述の通りであるが、BIツールはBIをサポートするためのアプリケーションであり、BIツールで構築したBIシステム(各種データソースとの連携及びダッシュボード・レポートの構築、等)が経営上の意思決定を手助けしてくれる。データはそのままでは何の価値も生まないため、膨大なデータの中から人間が効率良く理解できる形へ変換された有意義な情報を抽出し、柔軟性の高い開発が可能、かつ、使い勝手の良いBIツールを選択することが肝要である。

ツールの選択は予算・ユーザー規模・ニーズによって異なり、最適なツール選択もこれによって決まる。最も重要なことはBIを導入することが目的化するのではなく、BIを導入することで何を実現したいかを見定め、目先の課題及び将来に対する投資という目線を持つことである。

 

 

■ BI活用の実例

これまで述べてきた通り、BIとデータは相互依存の関係にあり、質の高いデータがBI構築を成功へと導く。ところが、世の中の殆どのデータは“汚い状態”、すなわち、データ分析に適していない状態で存在しているものであり、ここに非効率が常に生じてしまう。例えば、週次レポートの作成に必要なデータを収集したものの、最終アウトプットにするまで数時間、長ければ数日必要な場合もあるが、プロセスの自動化を可能にするBIを活用することで最大90%以上の時間削減が可能となる。作業に携わる人間が多いほどそのインパクトも大きく、経費の大幅削減を実現したケースも少なくない。ただし、ここで重要なメッセージは「自動化は時間を削減するのではなく、時間を作り出すもの」であり、この考え方が出来ればBI活用のメリットも理解できるであろう。

一方、BIはコスト削減だけでなく、経営判断の迅速化を可能にし、データ・ドリブンな経営実現において強力なツールとなる。例えば、経営会議において、参加者全員が何枚もの資料を参考にしながら議論していくシーン。紙ベースの資料であるがゆえに、質問内容に対する回答に辿り着くまでに相当の時間を要する場合もあり、即答出来ない=”悪”、というカルチャーを助長してしまうことも考えられる。

ここでBIを使うとどうなるか。全員が同じ画面を共有し、KPI(重要業績評価指標)を中心に構築されたシンプルなダッシュボード(経営指標が盛り込まれた管理画面)を各自のPCからアクセスし、様々な切り口(例:時系列別・国別・地域別・部門別・店舗別等)からほぼリアルタイムで経営状況を把握し、より適切な質問や回答を行うことが可能になる。「すぐに答えを持っていなくても良い。すぐに答えを出せるツールを持っておくこと」がBIの考え方である。

BIの活用事例は上記に限られるものではなく、データ・ドリブンな判断が必要な全てのシーンで活躍するであろう。逆に言えば、データを味方につけられるかどうかで他社との差別化の成否が決まり、それゆえBIが現代ビジネスに占める重要性は日々高まっている。