MENU

リフォーム資材(HI商材)で日本のホームセンター業態を確立させる

トピックス

トップページナレッジリフォーム資材(HI商材)で日本のホームセンター業態を確立させる

DATE
2020年03月05日

GBJアドバイザリーボードメンバー 豆成 勝博

日本のホームセンター市場

日本のホームセンター(以下、HC)市場は2000年までは成長してきたが以降は鈍化、4兆円弱で停滞し成長が止まっている。

成長の真の課題は何か

成長のテーマ・課題は幾つかある。リフォーム、PB(SPA)・プロ向け・農業・海外展開・EC等々であるが、成長の鍵の中心はホームインプルーブメント(以下、HI)でHC業態を確立させる事であると考える。

日本のHI市場

米国のHI市場は約43兆円(3,940憶ドル/北米ハードウエア小売業協会)、日本は約6兆円と言われている。

米国のHCのHIは約19兆円(HI市場構成比約55%を推計)も売り上げているのに対し、日本ではまだまだ少なく約1兆円(HI構成比約17%)しか売っていない。

全米のHC売上は約27兆円でありHIの売上構成比は約70%(推計)、日本のHC売上構成比は約25%である。これは米国のHC業態は確立しHC市場が出来上がっているのに対し、日本のHCはまだ業態が出来上がっていないという事を示しており、大半の売上を占めている商品は他業態やECと競合し成長が止まっているのである。

■ 米国と日本のDIYDo It Yourself)文化の違い

米国はDIY文化であるが日本は異なる。日本は住宅の価値を上げる行動はあまり取らず、設備が壊れたら修理修繕をするか取り替えるがほとんどで、DIYではなくメーカーや業者に依頼をする。一方、米国では住宅の価値を上げる行動をとる。以前はDIYで行ってきたが最近では業者に依頼する事(DIFM=Do It For Me)が多くなってきている。しかし住宅価値に対する考えは変わらない。

■ 日本の住宅リフォーム市場の6兆円の拡大と資材のHC取り込み

日本のリフォーム市場は現在6兆円だが、住宅価値の向上で市場を伸ばす事が不可欠である。住宅をリフォームすれば価値が上がるという構造にするには、政府や民間が一体となって努力する必要がある。18年総務省によれば住宅総数は6,241万戸、空き家は849万戸(13.6%)であり今後の少子高齢化・人口減少が予測される中、構造変化に対する住宅政策がとられていないのが現状である。中古住宅の評価を正確に捕まえられるようにする事が不可欠である。それらを踏まえてかどうかは疑問だが、国土交通省では現在のリフォーム市場6兆円を2025年に倍の12兆円にするという目標を立てている。

HCの役割、業態の確立はそれらリフォームの(特に)資材部分を米国HC並みに取り扱う事である。それには流通改革が求められる。どうすれば良いのかヒントを模索したい。

■ 市場が求める資材の品揃えとサービスの充実

市場が求める資材の品揃えを充実させるには、一定規模の大きさのスペースを持つ実店舗も重要だが、世界を見ると最近ではIT活用とサービスの充実で顧客に満足頂ける環境・体制を取り成功しているHCも出てきている。

米国のホームデポやロシアのペトロヴィッチ等である。

ホームデポ

ホームデポの2018年度の決算は売上1,082億ドル(対前年7.2%増)営業利益155億ドル(対前年5.8%)であった。米国の住宅建設好調の事情も有るが、ホームデポが好調な理由の1つにホームデポCEOが戦略として掲げているITの活用がある。オンラインで店舗と職場、自宅で直結したストレスの無い買い物体験を提供し、買い物の利便性とスピードの向上を図っている事例や(オフラインtoオンライン、オンラインtoオフライン)、店内マップを利用したデジタルナビゲーションで、商品の正確な位置を特定出来るなどのサービス向上、店舗とオンラインを繋ぎオンラインでの売り上げ向上等も図っている。

ペトロヴィッチ

ペトロヴィッチはロシアのHIストアーチェーンでフランスのルロイ・メルランやドイツのOBI等が進出する中、2018年にはOBIを抜いて業界第2位に躍り出た。同社の店舗では、顧客に買い物用タブレットを渡し、売場を歩いて欲しい商品があれば全てスキャンし、所定のレジで支払いを済ませば購入した商品を従業員がまとめて顧客の車に積み込みを行う。希望すれば自宅に運ぶ事もできる。まさにITと売場を直結させサービス・利便性の向上を図ったのである。2011年にはオンラインストアも開始し、その売り上げは総売上の35%を占めている。

■ 競合する可能性のあるアマゾンEC業界との差別化

ECは日本でも年々大きく増加している。2018年も対前年8.12%増である。EC化率を大きく占めるのは事務用品・文具(40.79%)、生活家電・AV機器・PC周辺機器等(32.28%)、書籍・映像・音楽ソフト(30.80%)である。その他(HI等含む)は0.85%とあまり進んでいない。

HI企業は消費者行動の変化や、テクノロジーの進化における対応が遅れていると考える。実店舗やオンラインでの買い物の動機付けは、実店舗の場合実際の商品を見てその場ですぐに購入できる事、便利な場所・アクセスであることに対し、オンラインの場合は最低価格・時間の節約・配送料無料などである。HI商品の多くは(例えば材木など購入の場合等)実店舗購入の動機そのものである。従ってECと実店舗の組み合わせは事例で示したように、ホームデポやペトロヴィッチ同様様々な部分で取り組む必要がある。オンラインと実店舗の組み合わせの基本はクリック&コレクト、クリック&モルタルである。客がオンラインで注文し店舗で商品を受け取る。自分の都合の良い時にオンラインで発注し、店舗では欠品など事前対応してくれ、直接店舗で購入するのとは違いそれらの時間を無駄にせず、且つ配送料が無料で必要な時に商品を受け取れる等、ECのみでは不可能な客のニーズ・満足度向上が図られる。更にテクノロジーの活用で店舗の効率やサプライチェーンの効率にも繋がってくる。

■ リフォーム資材で日本HC業態を確立させる

先にも述べたように日本のDIY文化は欧米のようには進んでいない。従ってBtoCが主力だけではリフォーム資材でHC業態の確立は厳しいものがある。BtoBの取り組みが重要なのである。IT(いわゆるEC・オンライン・デジタル等)の活用と実店舗とを繋げ、顧客サービスの大幅向上、店舗を含めた事業者の効率化等を進めることで、HC業態確立のベースが出来上がると考える。日本のHCはまだまだ成長の余地がある。現状の4兆円弱に止まっていてはいけない!!