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コロナ禍で加速する住宅へのニーズ変化を追う

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DATE
2020年08月25日

GBJアドバイザリーボードメンバー 豆成 勝博

住宅着工数の変遷

日本の住宅は欧米に比べ住宅寿命が短く20~40年で建替えが進んだ。しかし、地震大国の日本では耐震性の不安等が益々増し、生活水準も上がりより安全で快適な住宅に住みたいとのニーズが高まり、各社で高耐震・高品質の住宅開発が進められてきた。その結果1980年代半ば頃からは徐々に高耐震・高断熱・高気密の3高住宅が建ち始めた。

一方住宅着工は団塊の世代が家族を持ち住宅を購入する時期(1980年後半)がピークでその後は少子高齢化が進み直近での新設住宅着工数はピークの半減となっている。

住宅の価値向上

戦後から高性能住宅が建ち始める前までの住宅寿命は20~30年と言われていたが、最近の高耐震・高気密・高断熱住宅は50~100年住宅と言われ欧米並みの住宅寿命となり、更に快適な住まいへと進化してきている。国が推し進めている日本の住生活向上推進の結果でもある。夏は涼しく・冬は暖かい!騒音も静か!24時間換気システムで家の中の空気も常に新鮮!省エネ住宅、ゼロエネルギー住宅(ZEH)!と住宅の価値が大幅に向上してきたのである。

将来新設住宅とストック住宅の流通交代時代が来る(米国に見る

現在、日本の不動産市場では8割以上が新築である。その要因は依然として広がる新築向けの宅地造成、住宅ローン減税などの新築優遇税制、加えて中古住宅市場の不透明さなどが影響している。

米国の中古住宅の取引はなぜ活発なのか?米国では「売り手」と「買い手」のそれぞれの不動産仲介業者と契約する。また、不動産仲介業者が売買情報を提供し合う「不動産情報システム」があり、仲介業者が互いに正確な物件情報を把握できるシステムがある。詳細な情報を売り手から聞き、その結果をシステムに書き込む。買い手にとっては、過去の取引履歴が掲載されているため、物件の相場感を知ることができる。内覧予約も可能で仲介業者はより多くの物件が案内でき、売り手もその情報を知ることができる。なぜ米国は、ここまで情報をオープンにするかといえば、正確で信頼のできる豊富な情報を提供する事で中古住宅の取引を活性化させ、市場を拡大させるという考え方があるからである。

一方、日本では仲介業者がそれらの情報を囲い込み他社との差別化を図ろうとする。買い手の素人が、一方向の情報で図面や間取りを判断するのは難しい。また、日本では土地ばかりが重視され物件の価値はほとんど評価されない点も大きな違いである。

物件情報の共有化と評価のシステムが進むことで日本の中古住宅も活性化され新設住宅とストック住宅の交代時代が必ずやってくると考えられる。1981年の新耐震基準ができ、安全で品質の良い住宅開発がどんどん進んできたことがベースにあることは言うまでもない。

住宅部品と生産設備

高耐震・高気密・高断熱などの住宅部品は様々ある。例えば、窓枠においては木材枠→アルミ枠→アルミ・樹脂複合枠(寒冷地では樹脂枠)と高断熱・高気密への進化がある。生産方式もそれぞれ違う。木材は切断機やカンナなどの単一加工機、アルミの場合は鋳造・押出・表面処理の大型設備と共にプレス機や加工機、更にはそれらの自動化などである。硝子の場合は単板→複層硝子(2層のみならず3層・4層などの硝子で中間層には乾燥空気やアルゴンガスを封入)と進化し単板の手加工から複層硝子の生産自働化へと変化した。断熱パネルについてはOSBとOSBの間にウレタン発砲などを注入し強度(耐震性)と断熱効果を大幅に増す部品などが開発された。また、耐震構造のベースである基礎にベタ基礎が主に使われるようになり耐震性に優れ、湿気などが建物にまで上がらない高耐震・高品質の工法が用いられるようになってきた。

このように高断熱・高気密・高耐震の部品開発や建て方・技術が進み、安全で高品質な住宅(50年~100年住宅)が出来てきたのである。

ストック住宅のリフォームの可能性

ストック住宅は2018年現在、約6200万戸あるが全てがリフォーム対象とはならないと考える。安全で高品質の住宅は30年程前から本格的に建てられてきたが、それらは20年~30年で水回り設備の劣化における取り換えや屋根・外壁等の改修の時期がやってくるのである。また家族構成などが変化し間取りの変更や和⇔洋の変更などの要望も出てくる。前述したとおり安全で高品質の住宅がベースでのリフォームである。これらが中心になり不動産情報システムが本格稼働し、新築ではなくストック住宅のリフォームが活発になる時代が来ると思われる。(それ以前の歴史のあるストック住宅での躯体工事(耐震工事)、屋根・壁、間取り変更、設備工事など全面リフォームの例外はある)

IoTInternet of Things)住宅への取組み

上記、消費者アンケートなどから国民が持っている次世代住宅の関心ごとの1番が健康管理であった。健康上の課題対応の提供である。食品・食材の献立やレシピの提供、体重・血圧などのバイタルデータと医療機関の連動、室温・気温の自動制御、排泄物の自動分析による病気の早期発見などである。また、2番目には家事負担軽減・光熱費で全自動ロボット掃除機、ハウスクリーニング、冷蔵庫内の献立・レシピ提案、電気・ガスの使用量のモニタリング、消費電力を抑制する室内環境維持システムなどである。

スマートウォッチでの健康管理、スマートハウス、スマート家電など様々な分野を結び付け健康・便利で快適な生活空間の実現などを(国を挙げて)目指している。

このように安全・安心の快適な住まいから更に健康・省エネ、ZEROエネなどを考え取り入れた住宅開発が進んできている。

■ 新型コロナ禍での住まい

新型コロナ禍ではステイホームが叫ばれていて、家にいる時間が極めて多くなってきた。在宅ワークが増え、家事の負担も増大している。今まで述べてきた快適な住まいの条件がまた大きく変化してきているのである。これらからも今後の住まいのあり方で変革が進むだろうと考えられる。住宅のニーズは絶え間なく変化し、より一層の創意工夫が不可欠であり今後も快適な住まいの追及は終らない。