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顧客志向の“真の営業マン”に求められるマインドセット/スキルセットとは?

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DATE
2022年03月04日

GBJアドバイザリーボードメンバー 亀井 淳

 

―――前回は企業変革における“リーダー”の役割についてお伺いしました。ではそれを営業に置き換えた時どうするか、営業マンにおける心得についてお伺いしたいと思いますが、亀井さんにとって“真の営業”とはどう捉えていらっしゃいますか?

営業とは会社対会社でするものですが、先ず個々人の人間関係の構築、それから信頼関係をどれだけ醸成できるか、ということが営業の本質だと思っています。どんなに宣伝上手だろうが、値引きする力を持ってようが、人間力を高め人間関係を構築し信頼関係を醸成することが重要です。それから会社を代表している、会社の顔として営業しているというところを良く認識しなければいけません。企業の看板とは思ったほど仕事をしてくれないというのは前回もお話ししました。看板が仕事してくれるのはせいぜい30%くらいで、後は人間同士の付き合いです。彼はほんとにうちに良くしてくれるから、いろんな情報をくれるから、付き合いも深いからといったようなことが相手を動かします。ですから飛び込みなど初対面で営業する時にはまず人間関係の構築をして、それから次のステップにいく努力をしなければいけません。

営業の時大事なことは、相手の立場に立って営業するということです。相手のためと思ってしたことも、それはあくまで自分の会社の立場から考えた相手のためであって、相手にとっては違うかも知れません。相手のためにと考えることと、相手の立場に立って考えることはまったく違います。自分がその相手の立場だったら、自分に対してどんな情報を持ってきてくれるだろうか、今の業界をどう捉え、どう進めていけば良いかヒントをくれるだろうか、など相手の立場で考えることが必要です。

また、相手の会社と自社相互の利益を向上させることを考えて実行させていかなければいけません。相互の利益を継続的に向上させていくにはどうしたらいいか、自分のところだけ利益をあげようという姿勢はどこの世界でも通じません。短期的ではなく長期的にわたる安定的な取引、安定的な利益の向上をあげられるパートナーになれるよう、営業というのは続けていかなければいけません。

―――まさにその信頼関係の構築が一番難しいと思いますが、亀井さんと一緒にお仕事すると、周りの方が亀井さんに本当に感謝されているのを感じます。その信頼関係はどのように築かれてきましたか?

大したことはしていませんが私がいつも心がけてきたことは、決して相手の期待を裏切らないということです。例えば道の真ん中に大きな岩があったとして向こうに進めなかったとします。これを退かしてくれと言われても難しいですが、どうにか這いつくばって登ったら向こう側に降りれるかもしれないと思ったら、手に傷を作ろうが爪が剥がれようが登って向こうに行く、そのくらいの努力はします。それも相手のためにです。自分のためではなく、常に相手の立場に立って物事を考えてきました。冒頭に営業とは利益だけではなく人間関係の構築、信頼関係の醸成が大事だと話しました。極端に言えば、最初は損得ではなく100%相手のことを理解しよう、相手のために役立つ人間になろう、という想いを持っていれば、早く信頼関係が築けるのではないかと思います。

―――では具体的に営業マンに必須のマインドセット、スキルとは何でしょうか?

まずマインドセットについてですが、常に相手の会社及び業界のことを、自分が攻め入る前には徹底的に研究しなくてはいけません。それから、その他経済全般について浅く広く見識を広めることも重要です。何を聞かれてもその会社から派生する様々なちょっとしたこと、例えば先方が自動車関係の方ならタイヤとか鋼板、硝子、石油等関連する話についても知識を広めておくことです。「こいつできるな」と思わせるためにそんな深い知識はいりませんが、その会社に関係することは自分で勉強していくことは必要です。

それから100期待されたら常に110ないし120を応えるということです。これを営業マンとしてだけでなく自分の人としてのポリシーにして行動していると、その100を超えた10や20は170、180に匹敵するようになります。相手は100までしか期待していませんから、それに対して10上乗せした行為を見せると、自分のためにこれだけのことをやってくれたと信頼してくれます。そういう努力する気持ちを持っていないといけません。100を200にすることは無理ですが、せめて105でもいいから相手が望んでいたものよりちょっとでも上をいくように、常に自分を切磋琢磨、鍛錬し目標に向かっていかなければいけないと思います。

スキルについては、やはりここでも大事なのは人間関係と信頼関係、これを構築できるスキルを持った人が絶対的に強いです。そしてプレゼンターのプロになることも必要です。相手が望む情報を提供する、そのためのプレゼンテーションが大切です。会議室でするものだけがプレゼンテーションではありません。1対1で相手を説得する時にもプレゼンテーションのスキルは必要になります。またプレゼンテーションとは見せるもの、聞かせるものです。語彙の調子に強弱をつけ、相手のタイプに合わせて理由付けと結論の順番をよく考えることも重要です。

 伝える力(プレゼンテーション上の留意点)
プレゼンテーションは、会社にとって最も重要と考えよ。
プレゼンテーションは読ませるものでなく、見せるもの。メッセージは、20 文字以内。
プレゼンテーションの内容は、相手が望むであろう段階より、必ず一段上を企画する。
IT(動画・VR)を駆使して、斬新さを常に出す。
話し方に熱意を込める。
プレゼンテーションの結論を前半・中盤・後半、どこにもっていくかをよく吟味すること。結論をどこにもっていくかは内容にもよるが、大事なことと認識せよ。

 

また、一般的に日本人というものは仕事以外の時間を共有することで、お互いの人間性を理解することができ、信頼関係を築くきっかけとなります。時間の共有も2回目、3回目になると通常は話せないことや本音も出てきます。相手がこの人となら飲食を共にしても安心だと思ってもらえることが大切です。そして、通常じゃないこと、小さなサプライズを常に相手に与えていかなければいけません。

 聞く力(おもてなしの心得)
先方の役職、性格等を十分考慮して、店のグレードにも注意し、それなりの店を予約する。場合によっては、個室を準備する。
接待の相手が、企業の上位者であった場合、その方の下位の方の同伴をこちらの都合でお願いしてはいけない。
常に聞き上手に徹する。
自社及び自己アピールは控え目にし、聞かれたら答える程度にする。
上席がどちらかを必ず事前に確認しておく。
いかに自分が口が堅く、相手にとって安全な人間であるかを伝える。
その後のビジネスタイムに会った時は、会食の件は先方から言われない限りこちらからはふれない。

 

コミュニケーションスキルを常に磨くことも必要です。コミュニケーションとはいろいろな定義がありますが、私が考えるコミュニケーションとは相手に伝えて、それによって相手の行為が何か変わった時に初めてコミュニケーションが取れたと言えると思っています。相手が本当に理解し、変わらなければそれはただの伝言です。自分の会社の良さ、真面目さを理解してもらうために営業マンにとってコミュニケーション能力は必須で、この能力が低い人は営業マンにも、もちろんリーダーにも適しません。そしてもう一つ大事なことは相手の話をまず聞くということ、聞き上手であるということです。優秀な人にありがちなのですが、相手が話しているときに遮って自分の主張をする人がいます。けれどこれはいけません。相手の話をじっくり聞き、よく理解することが必要です。

最終的には会社の代表として、自信と誇りを持ちながら、尚且つ謙虚に、‟温かい営業“ができる人が望ましいです。そこには優しさがあって思いやりがあって笑顔があって喜びがあって、そういう全てポジティブな、総合的な温かさが大切じゃないかと思います。