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サーキュラーエコノミーの実現に向けて
~GBJが目指す社会、それに向けて出来ることを一歩ずつ~

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~GBJが目指す社会、それに向けて出来ることを一歩ずつ~

DATE
2022年03月10日

ゴードン・ブラザーズ・ジャパン 代表取締役社長(CEO 田中 健二

■ はじめに

コロナ禍が続く中、日本でもSDGsやサーキュラーエコノミーの動きが一段と加速しています。ちょうど先日ご縁がありJFBS*(Japan Forum of Business and Society)という学会に登壇して、サーキュラーエコノミーについて議論する機会がありました。今回のテーマは『サーキュラーエコノミーを目指して』と題して、従来のリニア型のエコノミー(生産-消費-廃棄)からどうやって循環型のエコノミーへ移行していくのか様々な角度から議論が行われました。リニアエコノミーから、日本でも浸透してきたリサイクリングエコノミー(生産-消費-リサイクル/リユース-廃棄)への移行、そして最終的には廃棄物を極力産み出さないサーキュラーエコノミー(生産-消費-リサイクル-生産:廃棄物を新たな原材料として活かす点が大きな違い)の実現に向けて、3R(Reduce=減らす、Reuse=再利用する、Recycle=資源として再活用)の取組みと、廃棄物を出さない又は廃棄物を新しい原材料として再利用していく様々な方策や取組みについて紹介がされていました。今回の寄稿では、こうした大きな社会変革の中でGBJとしてどのような関心を持ち、その実現に貢献していこうとしているのかをご紹介したいと思います。

 

この20年間の移り変わり

2018年のBBCニュースで、英高級ブランドのバーバリーが42億円相当の売れ残し商品を焼却処分にしていることが伝えられ、このニュースは瞬く間に世界各国で取り上げられ、賛否両論が巻き起こりました。バーバリーは「ブランド保護の為、こうした廃棄はやむを得ないものであり、余剰在庫を最小限に抑えるため綿密なプロセスをもっており、製品を処分する必要がある場合には責任をもって処置し、廃棄物の軽減と再利用の方法を模索し続ける」と話しています。バーバリー以外にも「カルティエ」や「モンブラン」を抱えるスイスのリシュモンは、過去2年間で約628億円相当の腕時計を処分する必要に迫られたとも報じられました。

日本国内でのアパレル産業をみてみましょう。1990年と比較して、国内市場規模推移は横ばいに留まっている一方で、供給量は約1.7倍に増加しています。つまり、大幅な供給過多が続いているのが現状です。この結果、購入された家庭から手放される衣類の量は年間約75万トン、うち約50万トンがごみとして廃棄されている現状があります。ごみに出された衣類が再資源化される割合はたったの5%ほど、そのほとんどが焼却・埋め立てに回っている状況です。ごみに回らない約34%はリユースやリサイクルとして再活用されていますが、もし、残りの全ての衣服が回収され、リサイクルを経て原材料に再供給された場合、最大で年間約2,500万トンのCO2排出量が削減できる試算となります。これは東京都における年間CO2排出量の約4割に相当する量であるから驚きです。

出典:環境省ホームページ https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/ 

 

■ GBJの目指すものと取組み

弊社GBJは創業以来以下のミッションを掲げて事業を行っています。

“Through finding and deep understanding of essence of value, we will create a Society where the value is fully utilized”

(私たちは、価値の本質を見極め、その「価値」が活かされる社会を創ります)

動産をキーワードに、流通小売業における商品在庫、製造業における製品在庫や中間財等に対する価値を見出すだけでなく、それを有効活用するような環境に配慮した社会を創り上げる努力を続けています。商品在庫を廃棄ではなく、再利用、再活用される仕組み(=プラットフォーム)を作り上げ、それを社会に実装していくことが使命だと考えています。各企業における個別の在庫問題の枠にとどまらず、業界全体または業界をまたいで余剰在庫問題の解決策を提示していくことに日々努力しています。成熟化した日本社会の中で持続可能なプラットフォームとして、OPS(オフプライス・ストア)ビジネスを2年半前にスタートさせました。これ以外にもECやアウトレットの有効活用や、そもそも廃棄商品を減らす最適MD/適正在庫コンサルティングといったサポートも実施しています。

 

■ 産業界の新陳代謝とSDGsへの取組み事例紹介(各社HPより要約)

アディダス
スポーツブランドとして業界を牽引するアディダスでは、海岸で回収されたプラスチックごみをリサイクルして、フィットネスシューズへ生まれ変わらせるという画期的な取組みを行っています。さらに2019年には、接着剤不使用で100%リサイクル可能なランニングシューズ「フューチャークラフトループ」の商用化を発表するとともに、2024年までに同社が製造するすべての製品に100%リサイクルされたポリエステルを採用することを公約しています。

ユニクロ
アパレル業界の国内トップ企業としてユニクロは「Re.UNIQLO」活動を進めています。ユニクロの全商品を対象にリサイクル、リユースへの取組みを進め、アフリカ等の難民への医療支援やCO2削減に役立つ代替燃料への再生などを実施する一方で、世界中でクローゼットに眠っているユニクロのダウン商品を回収し、最新のアイテムへリサイクルする活動です。さらに水の使用量を従来比最大99%削減(仕上げ加工時)した「BLUE CYCLE JEANS」など、よりサステイナブルなジーンズづくりを進めています。

ベンチャー企業(Indosole
前述したJFBSの会合では、バリ島発で廃タイヤを独自開発の技術によって再構築してビーチサンダルをつくっているベンチャーカンパニーも登壇されていました。廃タイヤに対する規制がない東南アジアの国々においてコスト削減のため廃タイヤを埋め立てや不法投棄する地域が多くあります。こうした廃タイヤを集め、微粉に粉砕し、リサイクルゴムとして再構築してサンダルをつくる、地道な活動ですが確実に前に進んでいるようでした。

■ おわりに

SDGsやサーキュラーエコノミー等のサステイナブルへの取組みにおいて大きな論点と言われているのが、その取組みにおける経済合理性の観点です。前述のIndosoleの事例でも、廃タイヤのリサイクルには相応のコストがかかり、どうしても最終製品にそのコスト負担が付加されてしまう可能性があります。政府からの補助金や税制優遇等の社会的インセンティブを制度化出来ないと、取組みのスピードが加速しない懸念があります。同時に、こうした取組みをミクロの個別企業で行うことにも規模や技術等の面で限界があり、単発やアドホックな取組みでなく官民一体となって業界全体としての仕組化を図っていく努力も必要でしょう。アディダスやユニクロの事例のように業界のリーディングカンパニーが率先してアイデアや技術、仕組みを作り、そこに社会全体で賛同して加速していくような取組みが、日本でもさらにグローバルに展開されていくことを期待しています。GBJとしてもその一助になれるよう取組みを進めていきたいと考えています。

 

*  JFBSは、企業と社会の関係をめぐる諸問題について、国内外の学界、産業界、行政、消費者団体、NPO/NGOなどと幅広い連携を形成し議論していく場として存在するNPO