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中規模商業施設の今後の方向性

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DATE
2022年10月14日

GBJアドバイザリーボードメンバー 黒松 弘育

 

■ GMSの変遷

戦後の景気拡大期に量産された中規模な商業施設が、今後どのように活用されていくか、中堅GMS業態で育った自分の生い立ちを踏まえ、今後の中型の商業施設の在り方について考察したいと思います。

まず流通業の変遷についてですが、1904年に東京日本橋に三越が開業以来、長らく百貨店が日本の流通を牽引していました。その後、1970年代に入りGMS業態である主婦の店・ダイエーがトップに躍り出て、流通革命の代表的存在となりました。

GMS業態は、1990年までは順調に市場規模を伸ばし、1990年代前半にはピーク迎えましたが、その後は専門店、ホームセンター、家電量販店、ドラッグストア等との異業種間競争により収益力が低下していきました。1990年代は各企業が売上シェアを守るために、次世代への変身、新しい形を構築する事なしに無謀な出店開発や安易な資金調達を繰り返した結果その付けは2000年には表面化し、損益分岐点の引き下げ、聖域のない費用削減や店舗のスクラップ、希望退職や配置転換など大胆な改革が必要となりました。一方で、M&Aを含む前向きな投資も行われましたが長続きはせず、特に老朽化の進む中型商業施設などでは、お客様のニーズを取り入れた見直しに着手することが遅れたように思います。

 

GMSの事業モデル転換

GMSの事業モデル転換のやり方の一つとして、事業構造自体を見直し会社分割を行うというやり方があります。地域の食材を扱うスーパーマーケット(SM)を運営する会社と、美と健康・日用品を扱う会社、そして地域の商業施設を運営する会社に分けるというやり方です。

元来、GMS業態は、3つの事業(衣料品、食料品、住居関連)の運営とテナント誘致する部門に分かれていて、衣料、食品、住居関連のバランスを考えて運営計画を練っています。商品リスクがある直営事業の論理で、強引に営業を進めたり、各業種間でマーケットもニーズも違ったりすることから様々な不効率も起こります。

一方で、テナント面積は肥大化し、空いている隙間に入れていく程度の管理になってしまいがちです。この手法では、地域のお客様のニーズを考え、理想的な商業施設を創りあげる事自体難しくなります。各地に点在する店舗においても衣料、食品、住居関連の商圏も客層も競合状況も違うわけですから、画一的な商品や一般的なショップ構成では、地域に密着した特徴を持たず、お客様の支持を失っていきます。

商業施設をやり替えることは大雑把に行うとかえってマイナスになってしまうこともあるので、1店舗毎に時間をかけて、丁寧に商業施設の活性化を行うことが必要です。店舗規模別でみたときに一番店舗数は多いですが、面積的にも、階層的にも中途半端になる中規模(1万平米前後の面積)の店舗については、地域のコミュニケーションセンターとして存在意義を出していくのも、一つの考え方だと思います。

従来の近隣型の商業施設(1万平米クラスで各店舗はGMS一つ)というスタイルは、SM500坪、総合衣料ショップ500坪、ドラッグストア+最寄り品で500坪の3つの核構成をとり、テナント500~1,000坪の面積をベースに各々の地域取組を行う場所を設け、「地域のコミュニケーションセンターとしての存在意義、地域の方々と地元のメンバーと一体になり、一緒に作り上げるショッピングセンター」を目指すのもいいでしょう。

大型商業施設(イオンモール等)と違い、年季の入った中途半端な面積の中型の商業施設は、地域の方々の憩いの場、「近隣型商業施設」として活性化します。近隣型とは何か?今も自問自答することがありますが、食品の売上が50%以上を占め、テナント数も10店舗以上あり、地域の官公庁、学校と連携し、様々な地域の催事取組が適時開催される施設ではないかと考えています。私が店舗の改廃を経験するなかで、注意していることは以下の点です。

➀ 地域毎に特徴を出し、作り上げていく
② SMとドラッグを中心に、テナントも含めた商業施設全体で協力してお客様に憩いの場を提供する
③ 館の賑わい、居心地の良さを提供する事が従業員の仕事であり、物だけを売る事だけでは決してない

「地域に密着した近隣型商業施設」では商流がDX、デジタル化に移行していく中で、「リアルの良さ」「ふれあい」「地域のきずな」にも拘りました。

 

■ 今後のショッピングセンター

一方、日本全体でのショッピングセンター(SC)の総数は、3,195か所もあります。また、1SCあたり51店舗ほどテナントが入っており、SCの面積は平均が1.7万平米となります。一方、売場面積1万平米に満たないSCは全体の43%、1,400近くもあります。

旧態依然のGMS1核のSCも26%あり、なんらかの活性化をしなければならない状況にあります。また大部分のSCが商業ビルで物販中心となっており、テナントの歯抜け、雑居ビル化が進んでいる状況が多く見られます。

関西エリアにおいては、SC数は568か所もあり、全国3,195のSCの内、17%以上あります。関西エリアの人口統計を見ると2010年から比べて2050年には人口は4分の1減少し、1700万人を切ると予想されています。15歳から65歳の中心世代は60%を下回るまで減少し、働き手の減少が大きな問題となることが予想されています。一方で、65歳以上の人口は一部の地域を除き、2040年迄増加し続けます。この関西エリアで起こっている事は、日本全体、とりわけ地方では、同じような問題に直面しているとみられます。

一方で中規模のSCの多くは、築20年超が経過し、老朽化・陳腐化が進んでおり、スタッフも高齢化が進み、デジタル発想についていけない事、マンネリズム、売るだけで地域との結びつきが薄くよそ者のイメージから脱却できない事等の問題点も多く抱えています。

 

近隣型ショッピングセンターは今後「無形の絆的な助け合う場」になっていく必要があります。入居しているスーパーマーケットは地域の食習慣を理解し、ドラッグストアや宅配、御用聞きなどのコンシェルジュサービスも必要になるでしょう。今後は、ショッピングシーンを通じて、地域の方々が連携し、情報発信ができる場になることを願っています。