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メタバースがもたらす社会とリテールの変化

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DATE
2022年12月06日

GBJアドバイザリーボードメンバー 原田 

 

■ そもそもメタバースとは

メタバース誕生の経緯

メタバースといえば、Facebookの社名変更が記憶に新しいところです。2021年10月、米国のビッグテックの1社であるフェイスブック(Facebook)がメタバースに約100億ドル(約1兆1400億円)投資し、社名を「メタ(Meta)」に変更すると発表しました。社名変更は、これまでの「Facebook」というイメージを刷新し「メタバースを創造するという会社」という新しいイメージを浸透させることを目的としたものでした。「Facebook」では、ひとつの製品に密接に結びついていて事業内容のすべてを表現できません。ザッカーバーグ氏の発言は次の通りです。
「”Meta” name reflected its focus on the company’s vision of creating the metaverse.」
これ以降、各種メディアで「メタバース(Metaverse)」に関する報道を見かけることが多くなりました。

そもそもメタバースと

メタバースとは、「meta」(超越、高次の)と「universe」(宇宙)を組み合わせた造語で、オンライン上に構築された、人が活動できる仮想空間のことを指します。インターネット上に構成される3次元の世界でアバターと呼ばれる分身を介し仮想世界に入ることができます。
メタバースでは、現実世界に限りなく近い状態で活動できます。現実世界と同じく常に時間が流れ続けいる世界で、私たちはアバターを動かして遊んだり、集まったり、ミーティングをしたりできます。オンライン上の空間で社会生活を送れます。
メタバースは新しい概念と思われがちですが、1992年に発表されたニール・スティーブンソンのSF小説「スノウ・クラッシュ」の世界から名づけられました。仮想空間におけるユーザー同士のコミュニケーションや売買取引は、すでに2000年代でも実現しています。

メタバースの市場規模

メタバース市場は大きく伸びるものと期待され、前述のフェイスブック(メタ)をはじめとして大手IT企業、スタートアップ等が多数参入しています。それでは、メタバース市場規模はどのように変化し、その内訳はどのようになっているのでしょうか。先ずは世界の動向を見てみたいと思います。

2020年はメタバースの市場規模が4,787億ドルでしたが、4年後の2024年には約1.6倍の7,833億ドルにまで拡大することが予想されています。
ゲーム市場で見てみると、ソフトウェア&サービスが1,833億ドル(20年)から2,505億ドル(24年)、ゲーム内広告が318億ドル(20年)から、537億ドル(24年)と伸びています。
現時点で他の関連サービスの時価総額を比較してみます。同レポートによると、Metaverse Web3.0は275億ドル、Facebook(Meta)が9,000億ドル、Gaming&eSportsが1.98兆ドル、Web2.0が14.8兆ドルとなっています。
こうしてみると、メタバースの市場規模は非常に大きく、将来的にも大きな成長が期待されていることが分かります。
次に、メタバースにおける日本の市場規模についても確認してみたいと思います。

2021年度の国内メタバース市場規模(メタバースプラットフォーム、プラットフォーム以外(コンテンツ、インフラ等)、XR(VR / AR / MR)機器の合算値)は744億円と推計、2022年度は前年度比245.2%の1,825億円まで大きく成長するものと見込んでいます。2026年度には1兆円に達することが予測されています。

 

■ メタバース社会と小売りの未来

メタバースもたらす社会変化とは

現代社会において東京一極集中と農村部の過疎化は間断なく進んでいます。人々や企業が密集して立地することにより集積の利益が生まれるからです。人口や企業の密集度と規模が拡大するほど効率性や生産性が上がります。 これが、メタバース社会になるとどう変化するのか。
「空間」や「距離」という概念こそ存在するものの、それらの制約から解放されます。 これによって満員電車での通勤は回避でき、会社や自宅の空間を自由に創造できます。狭隘なオフィスやリビングも快適な空間へと変化します。
実際、新型コロナの影響で企業ではオンライン会議、親しい友人とのオンライン飲み会などが可能になりました。このことにより、距離の制約はなくなり、結果、郊外への転居が進んでいます。2014 年、「Yahoo! JAPAN」ではオフィス以外も含め、働く場所を自由に選択できるリモートワークの制度「どこでもオフィス」が設けられました。時間と場所に捉われない 「新しい働き方」 が推進されています。ウィンタースポーツが好きな人は北海道、マリンスポーツが好きな人は沖縄に移住するといったことは既に始まっています。
メタバースがもたらす変化は、ビジネスシーンや居住空間にとどまりません。メタバースで通学したり、 ヨガ教室に通ったり、ライブイベントに参加することなどが可能になります。そのことにより、新たな交友がはじまり新たなコミュニティーが誕生します。メタバースの実現を通じて実空間における私たちの生き方、暮らし方はより一層大きく変化していくことになります。

メタバースによるリテールの変化

例えば、ゴルフライフも大きく変化します。ゴルフウエアとゴルフクラブを求めにお店に行きます。そこは自分が一度はラウンドしてみたいと思っていたゴルフ場。そこのクラブハウスにある無限の品揃えのゴルフショップで品定め。迷ったときにはゴルフファッションに詳しい販売員に相談。すべての質問に的確に答えてくれます。同時に気になる人気プロゴルファーの意見も聞いたりできます。好みのウエアが決まったら自分のアバターが試着。フェアウェイに出た時の自分のファッションも確認でき、実際にスウィングしてフィット感も確認できます。
次にクラブです。売場はブランドごとのコーナーに分かれており、それぞれのブランドのコンセプトが体感できます。実施に使っているたくさんの人の意見が聞けます。時にはプロゴルファーの意見も聞けます。お気に入りが決まったらフェアウェイに立ち試し打ち。フルセットなら実際に18ホールをラウンドして体験できます。
メタバースの世界では、従来の「店舗」の概念が一新されます。情報やコミュニケーションも含めた「ブランド体験」そのものが新たな概念として導入されます。購入前にどんなシーンで活用できるのかを頭の中で考えなければいけなかった従来の買い物体験と違い、試着やバーチャルな空間だからこそ体験できる環境が来店客に提供されます。結果全方位とのコミュニケーションや体験によりソーシャルな買い物体験が実現できるようになります。
当然のこととして。メタバース世界で購入を決めた商品を実世界で購入したいという欲求が生まれます。メタバースで気に入った商品が、実世界で自宅に配送されて楽しめます。メタバース世界と実世界の購買行動が相乗効果的に発生する好循環も期待されます。メタバースでの買い物体験は決してメタバースに閉じたものではなく、実世界とシームレスに融合した買い物体験となります。
新しい時代のオムニチャネル体験の誕生といえるかもしれません。