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Z世代への対応〜面談〜傾聴

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DATE
2023年02月07日

GBJアドバイザリーボードメンバー 伊原 保守

 

内定式での驚き

私は今、いくつかの中堅企業の顧問をさせていただいております。先日、その中の一つのある画像認識ベンチャー企業の約20人の新入社員内定式に出席し、私の体験談をお話ししました。その後昼食懇親会があり、内定者の方々とお話をしましたが、びっくりしたことが3つありました。

一つ目は全員が文系で画像認識の技術的専門知識があまりないにも関わらず、営業業務に対しITに強いから大丈夫、というよく分からない自信を持っていたことです。二つ目はこの会社を決定した最大理由が「会社の中に筋トレ場所がある」ことで仕事以外の福利厚生を大変重視していました。三つ目はまだ入社していなのに、会ったばかりの人に「自分は30歳で転業し、35歳で独立したい」などの自分の将来像を語ることでした。昭和生まれの私にはかなり衝撃的で、Z世代の人とはかなり価値観が違うことを実感しました。

 

■ Z世代の特徴と価値観

物の本によるとZ世代には下記の特徴、価値観があるそうです。この特徴、価値観を理解すると、私が、出席したベンチャー会社の内定式での内定者の発言、行動はなるほどと思えます。

特徴>
①  デジタルネイティブ
②  オープンコミニュケーション
③  ワークライフバランスを重視
④  一つの職場に固執しない
⑤  柔軟な働き方を求める
⑥  効率性を重視
⑦  安定を求める

<価値観>
①  多様性を受容
②  社会・環境問題への関心が高い
③  ジェンダーレスの考え方
④  協力や連帯感を大切に
⑤  自分らしさを大切に

 

■ 面談の実施例

(1) トヨタ自動車時代

私は40年間トヨタ自動車に勤務していましたが、室長、部長時代の約10年間、部下(約50人~150人)全員と毎年2回、一人30分から60分の面談を実施していました。

仕事への理解度、姿勢はもちろん、家庭環境、海外赴任可能性、直接上司(係長、課長)への不満など幅広く聞きました。これは、自分が部下といかにコミュニケーションをとるかを考えた上、面談が一番有効ではないかと考えたからです。面談だけで丸々一か月くらいの時間を使いましたが、効果は大変あり、お互いの理解が深まりました。私がその後、役員になりましたが、私が管掌している部署の部長にはこの面談を勧め、全部署で実施してもらいました。

(2) トヨタ輸送社長時代

2007年にトヨタ輸送の社長に就任しましたが、物流の仕事を現地現物で確認したいために、全国85拠点の全従業員1000人への面談を実施しました。従業員からは不満を提示してもらうのではなく、「会社の課題と対応策を提案」してもらいました。面談に8か月かかりましたが、従業員から約2,200件の課題が提出されました。この2,200件の課題を整理し、75の課題にまとめ、若手をリーダーにした6~7人の解決チームを結成しました。解決チームと私で一年かけて一緒に課題解決に挑み、1年後にはすべてのチームは課題解決をしました。

従業員からは面談については、「初めて社長と直接話すことができ、困り事への提案もできた」と大変好評でした。また、解決チームメンバーからは「入社以来初めて課題解決に対し論理的に挑戦でき、良い経験になりました」と言われました。15年たった今でも課題解決チームのリーダーとは定期的に一緒に食事をしています。

 

面談の大切さ

私は仕事をする時必ず、その仲間の人と「仕事の時間内で直接面談をし、相手の話しを聞くこと」が一番大切だと思い実践してきました。Z世代の若い人に対して、多くの中間管理職の人は「今の若い人は考え方がわからない、コミュニケーションが難しい」と感じ、コミュニケーションを避けているように見えます。Z世代の「期待するリーダー像」は「俺についてこいの織田信長のようなカリスマリーダー」ではなく、「優しくて、いつでも相談できる兄貴タイプ」と言われています。

今のマネージャーの方はなかなか、優しい兄貴タイプにはなれないので、結局、コミュニケーションを取らなくなってしまいがちです。その結果、ある日突然、若手社員に退社すると言われて、社内で大問題になっている話しを良く聞きます。私は古い世代の管理職(マネージャー)が優しいお兄さんに変わることは大変難しいと思います。

しかし、Z世代の方にも、「仕事の時間内で直接面談し、相手の話しを聞くこと」はコミュニケーションをとる上で、大変有効だと思います。面談の目的は部下とのコミュニケーション後、部下に「話して良かった。」「自分の頑張りを見てもらえている」と感じてもらえるような機会にすることです。

 

面談にあたって準備すること

面談には次の3つの目的があります。①部下のモチベーション向上、②上司と部下との信頼関係の構築、③普段聞けないことを聞く、

そのためには準備が必要です。私はトヨタ時代には下記の3種類のアンケートを準備しました。

①  仕事の方針・重点実施事項への理解度アンケートの作成
質問を10問くらい準備し、一つ一つ部下と理解度を確認しました。

②  職場環境アンケートの作成
これをベースに年休取得状況、残業状況を確認し、福利厚生、職場環境などへの要望、不満を聞きました。

③  上司への要望、不満アンケート
先輩、係長、課長などへの評価、不満を聞きました。

この資料は私限りにして誰にも見せませんでした。この3つのアンケートをベースに部下といろいろな話しをして、本人の良い点や修正点や将来の方向や海外赴任が可能かどうかなどを確認していました。

また、①と②のアンケートはグループ別、室別、部別に集計し、全員に結果を説明しました。実は、トヨタ自動車には従業員満足度調査がありますが、これは、私が実施していたこの面談アンケートを当時の人事部長が発見し、全社に拡大したものです。

 

傾聴のポイント

面談時に一番大切なことは「傾聴」の姿勢です。傾聴のポイントは2つあります。

一つ目は相手の話しをとにかく最後まで聞くことです。話している時は否定、反論、質問はしないことです。話している途中で反論したり、質問したりすると相手はそれ以上話さなくなり、口を閉ざしてしまい、聞きたいことが聞けなくなります。

もう一つ大事なポイントは相手の話した内容をもう一度繰り返すことです。すべての話しを聞き終えた後で「今お話しされたことは~ということですね」と繰り返すことです。これにより、相手は自分の言ったことを理解してくれたと思い、初めて心を開きます。

この二つのポイントが信頼関係を築くポイントです。偉そうに書いていますが、この二つは実は私は若い頃よく人の話を聞かず、尊敬する先輩から受けたアドバイスそのものです。

 

マネージャーの皆様

マネージャーの皆様の役割はかなり変化してきています。面談、傾聴を通して以下を感じられる職場づくりをしていただきたいと思います。

①  仕事で私が何を期待されているのかを分かっている
②  情報や資料、データ、機材など私が、自分の仕事をきちんとやる上で必要なものが揃っている
③  仕事において、毎日、私がベストを尽くせる環境が整っている
④  過去の7日の間に、いい仕事ぶりを認められ、賞賛された
⑤  私の上司、または職場の誰かが私のことを気にかけてくれている
⑥  職場に、私の成長を応援してくれている人がいる
⑦  私の意見を大切にしてくれている職場である
⑧  私の会社のミッションやパーパス(目的)が私の仕事は重要だと感じさせてくれる
⑨  私の同僚や周りの社員が、いい仕事をしようとコミットしている
⑩  職場にベストフレンドがいる
⑪  過去6ヶ月間に、職場の誰かが、私の成長や進捗について声をかけてくれた
⑫  この一年で、職場で学び、成長する機会があった

 

最後に

ぜひ、面談、傾聴を実践し、Z世代の若い方と①コミュニケーションを活性化し、②オープンで風通しの良い対話型の職場風土を構築し、③若い方の職場定着をはかり、「目標達成」を目指し、楽しい会社生活を過ごしていただきたいと思います。