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企業変革におけるリーダーの役割

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DATE
2021年07月06日

GBJアドバイザリーボードメンバー 亀井 淳

■ 企業変革とは?

――― コロナ後を見据え会社が生き残るために“企業変革”がキーワードになってくると思いますが、亀井さんにとって“企業変革”とはどのように捉えられていますか?

コロナによってテレワークが増えたり、買い物の仕方が変わったり、観光業や飲食業などあらゆる事が制限を受け、様々なことが徐々に変化しつつあると思います。自粛生活のなかであまり自覚してない人もいると思いますが、経済が大きく変化し、会社のあり方、個人の勤務のあり方、またモチベーションのあり方などあらゆることに変化が及んでいます。

以前からAIやDXの時代と言われ、あらゆることが変化しなくてはいけない時に、コロナは大変な疫病ではありますが、逆にコロナによって人間のあり方や経済社会・構造まで新しい時代に向かって変化を増進させていると思います。

経営者にとっての企業変革とは、そうした社会や経済の変化に対して如何に組織として、会社経営として、個人として対応していくかの道筋を示すことだと考えています。迅速な“変化適応能力”と言ってもいいかも知れません。

――― 一方で日本の会社は企業として、また組織として変化・変革が苦手という指摘もありますがどう思われますか?

私は昔から、会社経営というのは変化対応業だと考えています。特に小売というのは変化に対応しなければ生き残れません。古いことを否定するのが新しい論理と考えられがちですが、古き良き伝統や歴史をきちんと認識し維持したうえで、新しいことにチャレンジし変化していかなければ企業はダメになっていくと思います。

―――欧米企業に比べるとなぜ日本企業は変化のスピードが遅いのでしょうか?

上意下達と言いますか、昔は本当に書類にしても、何か一つ決裁を通すにもとにかく多くのハンコが必要でした。そしてそういう社会に慣れ親しんでしまっており、このあり方というのはある意味、個々人の権利能力、遂行能力の放棄ではないかと思います。やはり個々人がもっとしっかりするべきで、組織にリーダーは一人でいいですがリーダーシップを持つ人は一人では駄目で、その数が多いほどその会社は強固になっていきます。だから個々人のリーダーシップを持った人材の育成ということに、もっと日本企業は力を注ぐべきではないでしょうか。人間には各々に適した場所があり、そういったものを尊重しながら部下を育て会社を引っ張っていかなければなりません。リーダーシップをもった人間を多く組織の中に育てることがこれからは非常に重要になっていくと思います。

 

■ 企業変革におけるリーダー像とは?

―――日本企業ではリーダーシップを持った人材をなかなか育てられていないと言われており、この課題をどう見られていますか?

非常に難しい問題ですね。一つは、社内にそういうカリキュラムが意外と少なく、特に戦後から昭和50年代くらいまでは利益優先で会社を大きくするということに邁進してきたということがあると思います。

それから日本はある意味、徳川幕府300年間の封建時代の影響が日本人のDNAのなかに何となく入っているように感じます。資本と経営の分離ができず、オーナーが君臨している企業も多いです。創業家のなかに優秀な人がいないということではないですが、日本人は‟お殿様“に対して服従するというか、尊敬意識が強いように思います。その謙虚さを逆手にとって、経営者は社員を大事に育てていければ良いですね。

―――いろいろな人から亀井さんの素晴らしいリーダーシップについて話しを聞きますが、ご自身がリーダーとして気を付けていた点は何ですか?

いくつかありますが、まず、リーダーは“自分を律する”ことができなくてはいけません。これまでいろいろな経営者を見てきましたが、その最たるものは、会社の社長になると組織の中で全能に、絶対的な支配者になってしまうことです。そうするとみんなが社長の方を向いて仕事する傾向にあります。

社長になると人事、組織、あらゆることが自分の好き嫌いで自由にできるようになりますし、自分の言っていることがすべて正しく、自分が中心だと、だから何でもいいから自分の言うことを聞けと、自分の方針で会社を回してしまう、こうなりがちです。特に公私混同で平気でお金を使ったり、好き嫌いで人事をしたりというのは絶対してはいけません。それが自分を律する心なんです。人間ですから私にも好きだ嫌いだはありますが、組織を運営していく時とそれは別なんです。私が嫌だなと思う人にも生きる権利も働く権利もあるし、その人の考えもあるでしょう。だから、よく相手の話を聞いて自分との方針の整合性を図ることが必要です。

そこで大事になってくるのが“コミュニケーション”です。コミュニケ―ションというのはこちらの考えを伝えただけではコミュニケーションを取ったとは言えません。コミュニケーションというのは、なぜそうして欲しいのかきちんと説明をして、相手の行動がその通りとはいわなくても変わるところまでいって、初めてコミュニケーションが取れたと言えます。ただの言いっぱなしではコミュニケーションではなく、それは伝言です。

それから個々を教育していくという点では組織は個の集まりですから、一人一人を成長させないといけません。だからリーダーシップというものを後輩に教え込むということは、とても大切だと思っています。私は「リーダー育成のための33か条」というものを作りましたが、もちろん気に入らない人もいるでしょうし、部分的には許容できるけども一部は拒否するという人もたくさんいると思います。そういう時にリーダーというのは、相手の言う通りにする必要はないですが、その意見をきちんと聞くことは大切です。

 

 リーダー育成のため10箇条 ※33箇条より抜粋
1.   リーダーの条件
・人間性豊かなこと
・強い信念を持つこと
・自分を変革できる人
・自分を律することができる人
2. リーダーはその組織に一人でいい。ただしリーダーシップを持つ人は多いほど良い。
3. 経営とは価値を創造し、利益を継続的に出していくこと。
4. リーダーは常に傾斜としての方向性を決め、適格な方針を出す。
5. 組織の伝統と歴史は尊重しつつ、常に新しいことに調整していくこと。
6. 組織としての課題を先送りしてはならない。必要な時期に必要な決断が大事。
7. リーダーは常に「分析」「仮説」「実行」「検証」「改善」が大事である。改善が終わったらまた元の分析に戻り、これを何度も繰り返しスパイラル状に自分自身と仕事を進化させていくことが肝要である。
8. 組織のリーダーは集団体制で出来るものではない。リーダーは己の信念をもって、部下と信頼関係を作り、コミュニケーションをとりながら方向性を定め目的に組織を邁進させることである。
9. 組織の原泉は社員一人一人つまり個であることを肝に銘じること。
10. リーダー(経営者)は常にBS・PLを把握し、変化に敏感なこと。

 

また、看板が仕事してくれるわけではありません。看板が仕事してくれるのはせいぜい10~20%程度で、看板を背負うのは個々人でありチームです。経済・社会全体が変動しつつある時は、なおさら人間関係が重要視されます。経済というのは看板と看板が付き合ってるわけではなく、人間と人間の繋がりで成り立っていますから、個々人の人間力を磨かなければなりません。人間関係の形成は1、2か月でできるものではなく、何度かの葛藤を通じて、そこに信頼感ができ、人間関係が形成されていきます。それを自分の中で大切に育て人間関係を広げていくということが、結果的に会社にも社会にも貢献することになるんだと思います。

―――リーダーシップマインドを持つ人は、どういう風に作っていくのが良いのでしょうか。これまでどのように部下や近しい方々に接してこられましたか?

コミュニケーションの時間と機会を多くとり、自分の経験で得た信念をもって接することが大事だと思います。どこかで見ているかもしれないいろいろな目に対して恥ずかしくない行動、恥ずかしくない日々を送れ、とよく言ってきました。それから、自分が人にやられて嫌なことは人に絶対するな、自分が人にやられて嬉しいことはできる限りしてあげなさいとも。よく言われることですが、人の悪口は陰で言わない、注意するなら面と向かって2人の時に、褒める時はみんなの周りでする。そういう数多くの世間常識を満たしても自分がそうだなと思うことを、若い人達に懇切丁寧に教えていくことだと思います。今の経営者たちはあまりに忙しく、役員間やクライアントなどとの自身の人間関係でいっぱいで、部下の人たちとのコミュニケーションの時間と機会をとることが少し欠けているように感じます。テレワークの中だからこそ、そういう時間を強制的に作ることもできるのではないでしょうか。

 ―――リーダーシップ論とは少し外れますが、株主や社会など様々なステークホルダーとのコミュニケーションの取り方についてはどうお考えですか?

昔の日本の株主総会は特殊株主が多かったこともありますが、あまりに防御の姿勢が強かったように思います。質問を遮ったり、前列に社員株主を配置してみんなで拍手したりと、今だから言えることですがあれはおかしかったと思いますね。株主総会は年に1回の株主と対話ができるせっかくの機会ですから、そう否定的に捉えるべきではありません。コミュニケーションが一方通行にならないよう、何かあれば株主総会で言ってもらうような場所や機会を作るなど、真のコミュニケーションをとれるようにするべきだと思います。

―――その他なにか、経営者として又は一人の社会人として大事だと思われることはあります

私は30年程前からジェンダー問題、女性登用問題など様々なESG/SDGsに関して会社内で力説してきました。社会共通の利益と組織の利益を同期化させることができなければ、その企業は社会的に評価されない時代がくると。社会貢献や環境問題に会社が投資するというとこは会社の利益をそのまま落とすということですから、当時はなかなか理解されませんでしたが、本当にそういう時代になり、自分の信念に従って生きてきて良かったなぁと思います。

これからも災害や天変地異は起こるでしょう。そういう中でも社会共通の利益と組織の利益の同期化をどうすればできるか、そういう考えを基本的に持っていないと、会社として社会の様々な変化に対応できなくなっていくのだろうと思います。

私は若い頃に3か月ほどアメリカの東海岸から西海岸まで旅をしたことがあるのですが、その時に様々な経験をしました。その時の経験から、健常者は弱者に対し絶対に根源的なやさしさを持たなくてはいけない、思いやりを持たなくてはいけない、気配りをしなくてはいけない、身体障がい者の方たちにとって平等な世の中にしなくてはいけない、という強い信念を持つようになりました。その後イトーヨーカ堂で店舗開発をするようになった時にこれこそ自分の天職だと、高齢者、身体障がい者の方が平等に買い物ができる優しい施設を作ろうと、どこよりも休憩所を作ったり、段差をなくしたりと、いろいろな規約やハートビル法などをすべてクリアして店づくりを行いましたが、それが現在のアリオやグランツリー、イトーヨーカ堂の今日を支えている店舗づくりになっていると自負しています。人生には必ず自分の人生を変える場面、シーンがあるものです。社会人として自分の運命を感じるそういう場面、場面をしっかりととらえて大事にしていって欲しいですね。